つとめ)” の例文
梓は心の動くごとにつとめ落籍ひかそうと思わぬことはなかったが、かれが感情の上に、先天的一種の迷信を持ってるというはここのこと。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
其方儀天一坊身分しかと相糺さず萬事ばんじ華麗くわれいていたらく有しを如何いかゞ相心得居申候やうつたへもせず役儀やくぎをもつとめながら心付ざる段不屆に付退役申付る
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
若「アヽ此の比翼ぢらしもいたずら事になったか、怨めしい、それほど不実の人とは知らず、つとめうち一夜でもほかの客へはかわさぬ枕」
「それではかう云ふのですな、貴方はつとめを為てをつても、外の客には出ずに、この人一個ひとりを守つて——さうですね」
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
いわんや男子は外をつとめて家におること稀なれば、誰かその子を教育する者あらん。あわれというも、なおあまりあり。
中津留別の書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
然るに勝三郎は東京座における勝四郎のつとめぶりにあきたらなかった。そして病のために気短きみじかになっている勝三郎と勝四郎との間に、次第に繕いがたい釁隙きんげきを生じた。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
同時どうじかれつとめやすんでわざ/\此所こゝまでをとこであつた。紹介状せうかいじやういてれたひと萬事ばんじけてれる宜道ぎだうたいしても、あまりに輕卒けいそつ振舞ふるまひ出來できなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さてもかぬとてれほどの役廻やくまはりあるべきや、浮世うきよつとめめを一巡いちじゆんをはりて、さてもなほかヽるべき怠惰のらにてもあらば、如來樣によらいさま出迎でむかひまで此口このくちつるしてもかれず
暁月夜 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
毎朝仏様におつとめがすむと、お天気さへよければ、豆小僧は上の山へ柴刈しばかりに行くのでした。
豆小僧の冒険 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
后を守護するつとめを忘れさせ、7310
平生ふだんよりは夜が更けていたんだから、早速おつとめ衣裳いしょうを脱いでちゃんとして、こりゃ女のたしなみだ、姉さんなんぞも遣るだろうじゃないか。
湯女の魂 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つとめたるも先例せんれいなければ此時忠相ぬしは町奉行をやめられてさらに寺社奉行に任ぜられしなど未だためしなき美目びもくほどこ士庶ししよ人をして其徳を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
下士はよき役をつとめかねて家族の多勢たぜいなる家に非ざれば、婢僕ひぼくを使わず。昼間ひるまは町にでて物を買う者少なけれども、夜は男女のべつなく町にいずるを常とす。
旧藩情 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
同時に彼はつとめを休んで、わざわざここまで来た男であった。紹介状を書いてくれた人、万事に気をつけてくれる宜道に対しても、あまりに軽卒な振舞ふるまいはできなかった。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
かりそめにも殿様のお側近くつとめをする鹽原角右衞門、炭屋の下男に知己しるべは持たんわい、成程今をる事十五ヶ年以前、阿部家を出て上州東口の小川村に八ヶ年程浪人していた其の折
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
また二度のつとめをしてますます深みへ落ちようも知れず、もとより抱妓を置く金で仲之町から引取って手許てもとで稼がせるすうではなし。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つとめし大岡忠右衞門と申者は目今たうじ何役なにやくを致し居るやと御尋おんたづね御側衆おそばしう申上げるやう大岡忠右衞門儀いまだ山田奉行勤役きんやくにて罷在まかりある旨を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
みぎごとさだめてサンデイは休日きうじつにて、商賣しやうばいつとめ何事なにごと休息きうそくすることむかしの我邦わがくに元日ぐわんじつごとし。
改暦弁 (旧字旧仮名) / 福沢諭吉(著)
う云う訳だが、かねてお前も知っての通り、昨年悴がアいう訳になってわしつとめは辛いし、大きに気力も衰えたから、照にどんな者でも養子をして、隠居して楽がしたい訳でもないが
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
おう、つとめする身のままならぬテッテチチンテッテチチンリンリン==いつぞやぬし居続いつづけ寝衣ねまきのままに引寄せて==を聞かしねえ、後生だ。
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
れから家督相続と云えばれ相応のつとめがなくてはならぬ、藩中小士族こしぞく相応の勤を命ぜられて居る、けれども私の心と云うものは天外万里てんがいばんり、何もかも浮足うきあしになって一寸ちょいとも落付おちつかぬ。
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
し此の事が人の耳に這入って、明日あすにも新聞紙上へでも出るような事があっちゃア僕もつとめは出来ず、何うしても職を辞さんければならんから、今霄こよいうちすぐに僕は此者これを一旦連れ帰って
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
この時その役つとめし後、かれはまた再びじょうに上らざるよし。蛇責の釜にりしより心地あしくなりて、はじめはただ引籠ひきこもりしが、俳優やくしゃいやになりぬとてめたるなり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
是れ女子第一のつとめ也。夫の教訓有らば其おおせそむくべからず。疑敷うたがわしきことは夫に問ふて其下知げぢに随ふべし。夫問事とうことあらば正しく答べし。其返答おろそかなるは無礼也。夫若し腹立はらだちいかるときは恐れてしたがうべし。
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
何をしてもおつとめが出来ませんから、二人して勤めべき所、お一方ひとかたが病気故、新左衞門お一方で座光寺源三郎の屋敷へ宅番に附いて居ると、或夜あるよの梶井主膳と云う者が同類を集めて駕籠を釣らせ
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
半月ばかり、身にいたはりがあつて、つとめを引いて引籠ひきこもつて居たのが、此の日修法しゅほうほどき、満願の御二方おふたかた心祝こころいわいの座に列するため、久しぶりで髪容かみかたちを整へたのである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
そのとき私は藩の御用で城の門の番をするつとめがあって、二、三日目に一昼夜当番する順になるから、その時には昼は写本を休み、夜になればそっ写物うつしもの持出もちだして、朝、城門のくまで写して
福翁自伝:02 福翁自伝 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
隅「つとめをして居て仕方なしに相手をするので上りましたよ」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
明日のつとめのほどが——と誰も頼まない、酔ったのをかせにして、不参、欠席のことわりを言うのである。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
どんな真似でも一つ遣れば、立派な芸者の面目めんぼくが立つ。祝儀取るにも心持がかろうから、是非見たい。が、しかし心のままにしなよ、決してつとめを強いるじゃないぞ。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それもまた同じつとめむを得ぬ境遇であったから、中の従姉妹いとこが三人、年紀としの姉なると、妹なると、みんなお嬢様ではおらず、女房にもならず、奥様にはもとよりなり
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
……ところでものは相談さうだんぢやが、なんとかして、奥様おくさまたすけると工夫くふうはねえだか、のう、御坊ごばう人助ひとだすけは此方こなたつとめぢや、ひと折入をりいつてたのむだで、勘考かんかうしてくらつせえ。
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
……けんども、やきもきと精出せいだいてひと色恋いろこひむのが、ぬしたち道徳だうとくやくだんべい、押死おつちんだたましひみちびくもつとめなら、持余もてあました色恋いろこひさばきけるもほふではねえだか、の、御坊ごばう
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
あすこのな、蛇屋に蛇は多けれど、貴方がたのこの二条ふたすじほど、げんのあったは外にはないやろ。私かて、親はなし、ちいさい時からつとめをした、辛い事、悲しい事、口惜くやしい事、恋しい事
南地心中 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ところが不可いけないの、手が足りなくッて二度のつとめと相成ります。」
註文帳 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)