鼠色ねず)” の例文
茶店の床几しょうぎ鼠色ねず羽二重はぶたえ襦袢じゅばんえりをしたあら久留米絣くるめがすりの美少年の姿が、ちらりと動く。今日は彼は茶店の卓で酒をんでいるのだ。
桃のある風景 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
眼鏡もひげもなく、毬栗いがぐり頭で、黒の背広に鼠色ねずのネクタイという、誠に平凡な外貌ようすの山井検事が、大兵肥満で、ガッシリした、実行力に富む署長と、相対した時には、佳いコントラストを為した。
越後獅子 (新字新仮名) / 羽志主水(著)
中古の鼠色ねず縮緬ちりめん兵児帯へこおびが、腰でだらしなくもなく、きりっとでもなく穏健おんけんしまっている。古いセルの単衣ひとえ、少したけが長過ぎる。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)