黒光くろびかり)” の例文
脊にしている柱にかかった六角時計が、ガタン、ガタンとやっている。すすけた神棚には大黒様がある。古い私の家は何処を見ても黒光くろびかりのする気持がした。
北の冬 (新字新仮名) / 小川未明(著)
てらてらに黒光くろびかりした商人宿あきんどやど上框あがりがまちに腰をおろすと、綿入の袖無を着た松助まつすけの名工柿右衛門にそっくりのお爺さんが律義に這い出してきて、三十郎の顔をひと目見ると
生霊 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
そこにある一連の格子が黒いというのは、もとより塗ったものでもなければ、用材の関係でもない。年を経たその住いと共に黒光くろびかりを生じたので、古い方の感じが主になっているものと思う。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
馬来マレイ人やヒンヅ人が黒光くろびかりのするからだ黄巾赤帽くわうきんせきばういたゞき、赤味の勝つた腰巻サロンまとつて居る風采ふうさいは、極𤍠ごくねつの気候と、朱の色をした土と、常に新緑と嫩紅どんこうとを絶たない𤍠帯植物とに調和して中中なかなか悪くない。
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)