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麗人
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たおやめ
身近を通った
跫音には、心も留めなかった
麗人は、鳥の唄も聞えぬか、
身動ぎもしないで、そのまま、じっと。
留南奇の
薫馥郁として、
振を
溢るる
縮緬も、
緋桃の燃ゆる春ならず、夕焼ながら
芙蓉の
花片、水に冷く映るかと、寂しらしく、独り
悄れて
彳んだ、一
人の
麗人あり。
広くはあらぬ橋の歩み、
麗人の
背後を通って、やがて渡り越すと影が放れた。そこで
少時立留って、浮雲のただよう形、
熟と
此方を
視めたが、思切った
状して去った。