麓路ふもとじ)” の例文
麓路ふもとじ堤防どてとならびて、小家こいえ四五軒、蒼白あおじろきこの夜の色に、氷のなかにてたるが、すかせば見ゆるにさも似たり。月は峰の松のうしろになりぬ。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私が木曽の山の麓路ふもとじを通ると、商人あきんどらしい風俗の旦那と手代二人が、木かげに立って珍らしそうに山を見あげているから、モシモシ何を御覧なさると近寄って尋ねると
福渡からは旭川の流れに沿って、山の麓路ふもとじを七里あまり、人力車に曳かれて進んだ。
友人一家の死 (新字新仮名) / 松崎天民(著)
月の山の、花の麓路ふもとじほたるの影、時雨しぐれ提灯ちょうちん、雪の川べりなど、随分村方でも、ちらりと拝んだものはございます。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
運ぶ草鞋わらじ、いざ峠にかかる一息つくため、ここに麓路ふもとじさしはさんで、竹の橋の出外ではずれに、四五軒の茶店があって、どこも異らぬ茶染ちゃぞめ藍染あいぞめ講中手拭こうじゅうてぬぐいの軒にひらひらとある蔭から、東海道の宿々のように
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)