鶏小舎とりごや)” の例文
で、暗い晩に鶏小舎とりごやの蔭に隠れて待っていると、例の如く午前一時頃に何者か忍んで来た。何でも小児こどものような奴であった。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それから、母さんとの約束で、鶏小舎とりごやは、僕がいつもめに行くことになってる。僕はまた草むしりもする。どんな草でもいいってわけにいかないからね。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
ある学者の報告によると、その男の飼つてゐた一羽の孔雀くじやくは、どうかすると鶏小舎とりごやのなかへ忍び込んで、おめかしやの雄鶏をんどりあとをせつせと追ひ廻したさうだ。
それに家付きの妻女と、妻女の老母がいるので、狭い家の中はいつも鶏小舎とりごやのようににぎやかだった。
末っ子 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
近所の板塀いたべいやいけがきには、麦わらが立てかけてほしてある。めんどりが鶏小舎とりごやでひくく鳴いている。村ははしからはしまで静かだ。そこで正九郎は何もすることがない。
空気ポンプ (新字新仮名) / 新美南吉(著)
「おじいさん、お薬屋くすりやさんをつれてきた。」と、いうこえがきこえたのでした。そのいえ周囲しゅういは、ももはやしになっていました。鶏小舎とりごやがあって、にわとりがのどかなこえでないていました。
薬売りの少年 (新字新仮名) / 小川未明(著)
日が暮れて、鶏小舎とりごやめると、彼は、第一の用心をしておくのであるが、それも無駄むだで、明日の朝までは、とても持ちそうにない。晩飯ばんめしを食い、ぐずぐずしていると、九時が鳴る。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
「ははあ……オノリイヌは、きっとまた鶏小舎とりごやの戸をめるのを忘れたね」
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)