鳥居峠とりいとうげ)” の例文
御通行後の二日目は、和宮様の御一行も福島、藪原やぶはらを過ぎ、鳥居峠とりいとうげを越え、奈良井ならい宿お小休み、贄川宿にえがわじゅく御昼食の日取りである。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
洗馬から本山もとやまへ出、本山から新川にいがわ奈良井ならいへ出て、奈良井から藪原やぶはらへ参りまするには、此の間に鳥居峠とりいとうげがございます。
敵討札所の霊験 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
彼は、いつとなしに信濃から木曾へかかる鳥居峠とりいとうげに土着した。そして昼は茶店を開き、夜は強盗を働いた。
恩讐の彼方に (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ここは弥次郎兵衛やじろべえ喜多八きだはちが、とぼとぼと鳥居峠とりいとうげを越すと、日も西の山のに傾きければ、両側の旅籠屋はたごやより、女ども立ちでて、もしもしお泊まりじゃござんしないか、お風呂ふろいていずに
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
鳥居峠とりいとうげはこの関所からみやこし藪原やぶはら二宿を越したところにある。風は冷たくても、日はかんかん照りつけた。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
くわしく言えば、鳥居峠とりいとうげあたりをその実際の中央にして、それから十五里あまり西寄りのところに馬籠の宿があるが、大体に十一宿を引きくるめて中央の位置と見ていい。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
ある夏、保福寺峠ほうふくじとうげ鳥居峠とりいとうげを越して木曾福島きそふくしまに姉の家をたずねました。その時はわたし一人でもなく、吉村のむすこさんを連れて行きました。今の吉村さんもそのころはまだ中学生であったのです。
力餅 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)