さきが)” の例文
自分の思い立ったことを西山づれにさきがけされるのは、清逸の気性として出抜かれたというかすかな不愉快を感じさせられた。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
横浜根岸は無論さきがけ、これは別として東京では九段の招魂社が皮切り、明治の初年から二十年頃が最後、現に二十四年大村卿銅像のできる前まで、その周囲に馬場のらちが残っていた。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
殊に梅の花は百花にさきがけてらきいわゆる氷肌の語があり、枝幹は玉骨と書かれて超俗な姿態をあらわします。時には「暗香浮動ス月黄昏」と吟ぜられてその清香の馥郁ふくいくを称えられます。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
世界にさきがけて、強力なるその機械を十万台から整備するようになったのである。
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「おゝ、嬉しい。……」と、山吹がさきがけてよろこんだ。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
吾妻橋あづまばしは鉄橋のさきがけ、左の橋詰に伊豆熊という安価の鰻屋、総二階に客がいっぱい。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)
世界にさきがけて、すでに、四次元振動現象の研究がすすめられていたということで、たいへん結構なことであるが、金星においては、更にそれよりももっと以前から、その研究が完成しており
地球要塞 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そう女将おかみは葉子の思っている事をさきがけにいった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
あるいは牡丹の花の開く工合、本所七不思議の化物、大切りには「鏡山」のお初岩藤、「かさね」の土橋の殺しなど怪談めいた狂言で、セリフや鳴物入りの大車輪、いわばトーキーのさきがけ。
明治世相百話 (新字新仮名) / 山本笑月(著)