骨董屋こつとうや)” の例文
私は通りへ出て、そこから一町ほど先きにある、今死んだ姉の末の娘の片づいてゐる骨董屋こつとうやへ飛込んだ。骨董屋といつても、店先きには格子がはまつてゐた。
町の踊り場 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
或日又遊びに来た室生は僕の顔を見るが早いか、団子坂だんござかの或骨董屋こつとうや青磁せいじ硯屏けんびやうの出てゐることを話した。
野人生計事 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其の頃は京子の實家さとも全盛で、河から河へ廣い地面を貫いた網島の邸に贅澤をしてゐた。たま/\道臣が其の邸へ行つても、出入りの骨董屋こつとうや以上の待遇は受けられなかつた。
天満宮 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
八、軽井沢の或骨董屋こつとうやの英語、——「ジス・キリノ(桐の)・ボツクス・イズ・ベリイ・ナイス。」
病牀雑記 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
其処そこへ雛でも売つたらと父へ勧めてくれましたのは丸佐と云ふ骨董屋こつとうやの、……もう故人になりましたが、禿あたまの主人でございます。この丸佐の禿げ頭位、可笑をかしかつたものはございません。
(新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
僕の青磁せいじ硯屏けんびやう団子坂だんござか骨董屋こつとうやで買つたものである。もつとも進んで買つたわけではない。僕はいつかこの硯屏のことを「野人生計事やじんせいけいのこと」といふ随筆の中に書いて置いた。それをちよつと摘録てきろくすれば——
身のまはり (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
所謂いはゆる竹町物たけちやうものを商ふ骨董屋こつとうやが広告に利用しなければ幸甚かうじんである。
鑑定 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)