馬煙うまけむり)” の例文
この日、馬煙うまけむりは天をおおい、両軍の旗鼓きこは地を埋めた。なにやら燦々さんさんと群星の飛ぶような光を、濛々もうもうのうちに見るのだった。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と——彼方から馬煙うまけむりあげてこれへくる一陣の兵馬があった。見ると真っ先に趙雲子龍、あとには三百の部下が彼と共に眼のいろ変えてあえぎ喘ぎ馳け続いてくる。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「何を長々しいご詮議だて、そんな場合ではありませんぞ、もはや敵の先鋒が、あれあのとおり、馬煙うまけむりをあげ、を鳴らして、近づいて来るではありませんかっ」
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うしろのほうから馬煙うまけむりあげて追っかけてくる三百騎ほどな軍隊があった。たちまち追いつかれたので、関羽は、孫乾に車を守らせ、一騎引っ返して待ちかまえた。
三国志:06 孔明の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
砂塵と悲鳴につつまれながら、帝の御車は辛くも十数里をはしって来られたが、ふと行く手の曠野に横たわる丘の一端から、たちまち、漠々たる馬煙うまけむりが立昇って来るのが見えたので
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はっ」と、許褚は、飼い主のこぶしを離れた鷹のように馬煙うまけむりをたてて翔け向った。そして目ざした敵へ寄るかと見るまに、李暹りせんを一刀のもとに斬り落し、李別が驚いて逃げ奔るのを
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「今、南の方から、敵ともお味方とも分らぬ一隊が、馬煙うまけむりをあげて、これへ来ます」
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝頼をめぐる幾多の旗さし物や馬簾ばれん母衣ほろや伝令旗や、また馬のいななきや、甲冑の光や、星の如き刃影槍光じんえいそうこうは、血けむりと馬煙うまけむりにつつまれて、さながら潮旋風しおつむじとらわれた一個の巨船のように
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)