飾付かざりつけ)” の例文
商店の飾付かざりつけを見る振りをして立留り、男一人の客と見れば呼びかけて寄添い、一緒にお茶を飲みに行こうと云う怪し気な女もあった。
濹東綺譚 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
部屋はどちらかと云へば小さく飾付かざりつけも簡素であつたが、小ぢんまりと、綺麗に片附いてゐるので、感じがいゝのだつた。
其処に飾付かざりつけて在ッた木像にんぎょうの顔が文三の欠伸あくびをした面相かおつきているとか昇の云ッたのが可笑しいといって、お勢が嬌面かおに袖をてて、勾欄てすりにおッかぶさッて笑い出したので
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
広重は顔見世乗込かおみせのりこみの雑沓、茶屋飾付かざりつけの壮観をよそにして、待乳山の老樹鬱々うつうつたる間より唯幾旒いくりゅうとなきのぼりの貧しき鱗葺こけらぶきの屋根の上にひるがえるさまを以て足れりとなし、また芝居木戸前しばいきどまえの光景を示すには
江戸芸術論 (新字新仮名) / 永井荷風(著)