顕現けんげん)” の例文
その正面こそ大同電力の白い白いダム堰堤えんていである。古典的の幽邃ゆうすい奇峭きしょうとはここに変転して、近代の白と灰銀かいぎんとの一大コンクリート風景を顕現けんげんする。
木曾川 (新字新仮名) / 北原白秋(著)
奇怪な神秘の顕現けんげん慄然りつぜんとしながら、今、彼の魂は、北国の冬の湖の氷のように極度に澄明ちょうめいに、極度に張りつめている。それはなおも、埋没まいぼつした前世の記憶の底を凝視ぎょうしし続ける。
木乃伊 (新字新仮名) / 中島敦(著)
だから、人間こそは、最もおおきな顕現けんげんと行動をする——しかも生きたる霊物ではないか。
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、それこそ、時の氏神うじがみ顕現けんげんのように、囲繞いにょうされていたのである。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)