頬肉ほおにく)” の例文
あおざめた、——れた頬肉ほおにくの底に瞼はきれこんで、ちて行くように深く閉じた。それを手繰りあげるように阿賀妻は力をこめて云った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
蒸気むしけの陽気に暑がって阿弥陀あみだかぶりに抜き上げた帽子の高庇たかびさしの下から、青年の丸い広い額が現われ出すと、むす子に似た高い顎骨あごぼねも、やや削げた頬肉ほおにくも、つんもりした細く丸い顎も
母子叙情 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
百姓ひゃくしょうのうちでったってこれ位にはできるんだ。一体どうしたてんだろう。心当りがつかないかい。頬肉ほおにくなんかあんまり減った。おまけにショウルダアだって、こんなにうすくちゃなってない。
フランドン農学校の豚 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
吉原兵太郎は何故か片膝かたひざ立てたのだ。彼の頬肉ほおにくはぴくぴく動いていた。神山外記は唇をとがらかしてそそくさと立って行った。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
目の下の頬肉ほおにくが上気したため、少年のように赤らんでいた。何をいても貴殿に会わずばなるまいと思って——と、それを云いそびれてしまった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)