にわか)” の例文
やがて眼界にわかに開けた所へ出れば、重畳ちょうじょうせる群山波浪のごとく起伏して、下瞰かかんすれば鬼怒きぬの清流真っ白く、新しきふんどしのごとく山裾やますそぐっている。
それで、私も思わず行水から出て、東の方を見ますと、鮮やかな虹が立っておりました……その時私は、にわかにこの屏風の図題に思いついたのでした。
虹と感興 (新字新仮名) / 上村松園(著)
かまどの側には、薪が三把ほど転がっている、防寒具を整えて来なかったが、これで焚火たきびに事欠かないと解って、仮令たとい天候が悪くっても、泊る宿があるという気強さが、にわかに胸に溢れて来る。
雪中富士登山記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)