頓珍漢とんちんかん)” の例文
最近流行の何とか漫才というものにすら、きっと頓珍漢とんちんかんな受返事をする相手の役があって、形だけは古いものを保存しているのである。
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
「狭いんで驚いちゃ、シキへは一足ひとあしだってめっこはねえ。おかのように地面はねえとこだくらいは、どんな頓珍漢とんちんかんだって知ってるはずだ」
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「まあ! あなたは先刻さっきから聴いていらっしゃらなかったのね。道理で御返事が少し頓珍漢とんちんかんだと存じましたわ」
親鳥子鳥 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
洒落しゃれとか、野鄙やひな文句とか、頓珍漢とんちんかんな理窟とか、嘘や出鱈目でたらめとかは、私の知れる限りにおいて、全然痕跡もなく、何れも皆真面目な教訓、又は忠言のみであった。
「お前の話は少し頓珍漢とんちんかんだよ。普賢菩薩が、衆生濟度のために、江口の遊君いうくんに現じたといふ話だらう」
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
見る事聞くこととかく頓珍漢とんちんかんなことばかり、一口にいえば、やや神秘的とも幻想的ともいえる雰囲気アトモスフェルの中に、ただ夢に夢見る心持、昨夜も夕景から「三匹の小猿荘ヴィラ・トロワ・サンジュ
この頓珍漢とんちんかんなる出来事のために我輩はいよいよ変テコな心持になる、ペンはますます乗気になる、始末がつかない。
倫敦消息 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ハハハハそう云う人がせめて百人もいてくれると、わたしも本望ほんもうだが——随分頓珍漢とんちんかんな事がありますよ。この間なんか妙な男が尋ねて来てね。……」
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「さあそこまではまだ調べが届いておりません。その内調べて見ましょう」これで懸合をやった日には頓珍漢とんちんかんなものが出来るだろうと吾輩は主人の顔をちょっと見上げた。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
肉体の感覚美をてるか、どっちかにしなければなりません、が両方共強情だから、収まりがつきにくいところを、無理に収まりをつけて、頓珍漢とんちんかんな一種の約束を作りました。
文芸の哲学的基礎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
迷亭から見ると主人の価値は強情を張っただけ下落したつもりであるが、主人から云うと強情を張っただけ迷亭よりえらくなったのである。世の中にはこんな頓珍漢とんちんかんな事はままある。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「……そんな頓珍漢とんちんかんな、処分は大嫌だいきらいです」とつけたら、職員が一同笑い出した。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)