鞺鞳とうとう)” の例文
五、六丈の高さであろう、鞺鞳とうとうの響は近いだけに黒部本流の瀬の音も紛れない。瀑壺から溢れた水は、又低い瀑となって本流に躍り込んでいる。
黒部川を遡る (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
諏訪頼重の居城と見えて、今鞺鞳とうとうと鳴らす太鼓に、湖上に浮いていた水鳥がハラハラパッと飛び立った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
月白く露深き丘の上にはるかに印度洋の鞺鞳とうとうたる波濤を聞きつつまきを組上げて荼毘だびに附した。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
鞍馬くらま道士どうし果心居士、竹童をひっかかえて岩頭がんとうにたち、鞺鞳とうとうたる雷神らいじんの滝を眼下がんかにみた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
海は漫々まんまんとして藍よりも濃く、巨浪きょろう鞺鞳とうとうとして岸を打つ。
蝋人形 (新字新仮名) / 小川未明(著)
鞺鞳とうとうたるたきの水にうたれてどくが洗われたためか——あるいは、竹童の精神を修養しゅうようさせる果心居士かしんこじの心で、居士が、神力をもって癒やしたものか、とにかく、竹童はおのれの目の見えるのをうたが
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
下へ廻って見るとそこに大きな淵が現われ、其上には岩の円天井が蓋のように掩いかぶさり、一方だけが欠けて下流に面している。奥からは鞺鞳とうとうの響と共に白い水沫の飛ぶのがちらちらと目に入る。
渓三題 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
吹き上げるしぶきの中から耳をろうする鞺鞳とうとうの響が聞える。
釜沢行 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)