青楓あおかえで)” の例文
二坪に足らぬ市中まちなかの日蔭の庭に、よくもこう生い立ちしな、一本ひともと青楓あおかえで、塀の内に年経たり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
東より西の此方こなたに、二ならび両側の家軒暗く、小さき月に霜てて、冷たきしろがね敷き詰めたらむ、踏心地堅く、細く長きこの小路の中を横截よこぎりて、ひさしより軒にわたりたる、わが青楓あおかえで眼前めさきにあり。
照葉狂言 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
飜然ひらりと映って、行燈あんどうへ、中から透いて影がさしたのを、女の手ほどのおおき蜘蛛くも、と咄嗟とっさに首をすくめたが、あらず、あらず、柱に触って、やがて油壺あぶらつぼの前へこぼれたのは、の葉であった、青楓あおかえでの。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)