青嵐あおあらし)” の例文
歳は三十の前後、細面ほそおもてで色は白く、身はせているが骨格はえています。この若い武士が峠の上に立つと、ゴーッと、青嵐あおあらしくずれる。
ふとん着て寝た姿の東山、清水きよみずからは霞が降って、花には遅いがそれゆえにまた程よく程のよい青嵐あおあらしの嵐山。
「うむ、いいな……」思わずひとみ四方よもせた。紺青こんじょうの海遠く、淡路の島影は夢のよう。すぐ近くには川口の澪標みおつくし青嵐あおあらしの吹く住吉道すみよしみちを日傘の色も動いて行く。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この途端、青嵐あおあらしというには余りに凄かった。魔風と云おうか、悪風と去おうか、突如として黒姫おろしが吹荒ふきすさんだ。それに巻上げられた砂塵すなぼこりに、行列の人々ことごとく押包まれた。
怪異黒姫おろし (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
青嵐あおあらしする波の彼方かなたに、荘厳そうごんなること仏のごとく、端麗なること美人に似たり。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「いいか、胆吹山へ着いたら上平館かみひらやかたというのをたずねて行くんだ、そこに青嵐あおあらしという親分がいる」
彼の姿が山上へ出ると、ここでもまた、五月の青嵐あおあらしに声を染めて
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「もし、あんたが青嵐あおあらしの親分さんでござんすか」