雷同らいどう)” の例文
無口な母親は、娘の言葉に軽く雷同らいどうするだけだったが、才次が傍で聞いていようものなら、黙って妹に話を続けさせておかなかった。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
とんでもないことを言うやつだと、出羽守があたりを睨み廻している間に、群集心理というのか、人々はみな今の由公の言葉に雷同らいどうして
煩悩秘文書 (新字新仮名) / 林不忘(著)
元日を御目出おめでたいものとめたのは、一体何処どこの誰か知らないが、世間がれに雷同らいどうしているうちは新聞社が困るだけである。
元日 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
多くは形式にながれ、多くは理論にあそび、さもなければ心にもない議決におよそ雷同らいどうして、まずこの辺という頃合いを取って散会を告げる。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
われもわれもと雷同らいどうした、二年生はてんでにたい焼きをほおばって、道路をうろうろした、中学校の後ろは師範学校しはんがっこうである、由来いずれの県でも中学と師範とはなかが悪い
ああ玉杯に花うけて (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
だが、かつて一トたび北京軍ほっけいぐん大名府だいみょうふに仕えていた日もある青面獣楊志ようしは、さすが小首をかしげて雷同らいどうもしなかった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この附属物と、公正なる人格と戦うとき世間は必ず、この附属物に雷同らいどうして他の人格を蹂躙じゅうりんせんと試みる。天下一人いちにんの公正なる人格を失うとき、天下一段の光明を失う。
野分 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほどなく、劉璋の嫡子劉循りゅうじゅん、その祖父呉懿ごい、二万余騎をひきいて、雒城へ援けにきた。この軍のうちには、蜀軍の常勝王といわれた呉蘭ごらん将軍、雷同らいどう将軍なども加わっていた。
三国志:09 図南の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ってみない前なら知らぬこと。血気の赴くままを行ってみて、その結果を眼に見、その浅薄あさはか慚愧ざんきしている自分には、生憎ながら、もう熱情が乏しい。雷同らいどうはご免こうむる)
梅里先生行状記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
それを天堂や孫兵衛や周馬に打ち明けると、三人も異議なく雷同らいどうした。
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)