離反りはん)” の例文
楊秋ようしゅう李湛りたん侯選こうせんなど、かわるがわる離反りはんをすすめた。かの五旗の侍大将は、すでに馬超を見限っているもののようであった。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
単純な何の取柄とりえもない薫より、世の中をずっと苦労して来た貝原にむしろ性格のたの甲斐がいを感じるのに、肉体ばかりはかえって強く離反りはんして行こうとするのが
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ひとたび離反りはんを口に出した者というものは、後難を案じるため、いかに説いても、容易に思い止まらぬものだ。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
昌幸まさゆきの経歴は、こういうふうに離反りはん常なきものだった。手腕家ではあるが無節操であり、計謀に富むが、気局は大きくない。評されれば、その通りである。
新書太閤記:11 第十一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ひとり中央といわず、この九州でも、武族間における離反りはん雷同のあさましさは、いやというほど、四囲に見てきた彼である。なかなか正成への未練は多い容子ようすであった。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
義なく、節なく、離反りはん常なく、そのくせ、生半可なまはんかな武力のある奴。——ゆく末、国家のためにならぬから、殺してくれと、家兄玄徳のところへ、曹操から依頼がきている。
三国志:04 草莽の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
勝入が、まだ池田勝三郎のむかしから前田犬千代などと共によく清洲の町を、飲みあるいた悪友でもあり、以後、おたがいに、生死のなかも、離反りはんせずに来た善友でもあるからである。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
前田は先に立って、庭上の幕舎ばくしゃのひとつへ導き入れた。本来は家の内へにない上げてやりたいのであるが、黒田官兵衛なるものは今なお信長からゆるされていない離反りはんの臣とされている身分であった。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
で、伊丹の白銀屋新七とは、義理ある兄妹でもありますので、新七の手づるを以て、城内にある離反りはんの者を語らい、奥仕えに入れて、ひそかに殿のご安否をつねに探らせていた次第にござりまする
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)