陋態ろうたい)” の例文
彼は今や黙示の深きに接し、信仰の絶巓ぜってんに登りて、遥か下に友の陋態ろうたいを眺むるの余裕を抱いている。故に友の毒矢は彼を怒らせない。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
英米人えいべいじんまへには「ジヤパン」とせうし、佛人ふつじんへば「ジヤポン」ととなへ、獨人どくじんたいしては「ヤパン」といふはなんたる陋態ろうたいぞや。
国語尊重 (旧字旧仮名) / 伊東忠太(著)
家と家と相隔つるの陋態ろうたいを脱するをえば、自然の人情はここに油然としてわき起こり、余力多き婦人は必ず走って多産婦人を助くべきは想像に難からざるべし。
婦人の天職 (新字新仮名) / 堺利彦(著)
……文壇の覇権手に唾して取るべしなぞと意気込んでね……いやはや、陋態ろうたいを極めて居たんだ。
予が半生の懺悔 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
西洋の新らしい説などを生噛なまかじりにして法螺ほらを吹くのは論外として、本当に自分が研究を積んで甲の説から乙の説に移りまた乙から丙に進んで、ごうも流行を追うの陋態ろうたいなく
現代日本の開化 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
何の得る所なき自己陶酔、キザな神様気取りの、聖者気取りの穀潰ごくつぶしが、一人出来上るだけである。日本国民は、一時も早くそんな陋態ろうたいから蝉脱せんだつして、一歩一歩向上の生きた仕事に従わねばならぬ。