阿弥陀堂あみだどう)” の例文
それはもう秋風の立ち始めました頃、長尾ながお律師様りっしさま嵯峨さが阿弥陀堂あみだどうを御建てになって、その供養くようをなすった時の事でございます。
邪宗門 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
いつぞや、小松谷の阿弥陀堂あみだどうで、どこかの猟犬かりいぬに腕をまれた時、あまり血が出て止まらないので、あの方の泊っている宿へ行って医者を
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そうらしいな。」そう僕はいい加減な返事をしながら、その池の向うに見えている阿弥陀堂あみだどうを熱心に眺めだしていた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
果ては、大工左官までが業を休み、町内じゅうの小前のものは阿弥陀堂あみだどうに詰めて、上納御年貢米おねんぐまい軽減の嘆願を相談するなど、人気は日に日に穏やかでなくなって行った。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
阿弥陀堂あみだどう
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
そして、その一帯な竹林の中から、古い塔の水煙すいえんや、阿弥陀堂あみだどうの屋根や、鳥居のあたまが浮いている。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
さっきの阿弥陀堂あみだどうのほうをぼんやりと見かえしていた。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
(小松谷の阿弥陀堂あみだどうから連れて来て、自分が今、世話をしてやっている朱実と、あの武蔵と、どういう縁故があって、あんなに親しそうに私語ささめごとわしているのか)
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鳥部ノ山の阿弥陀堂あみだどうから、夕闇の鐘は諸行無常と告げわたっている。けれど、こうすさまじく生き過ぎている人間の耳には、色即是空しきそくぜくう梵音ぼんおんも、馬の耳に念仏というものである。
宮本武蔵:04 火の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)