阿兄あにき)” の例文
すると阿兄あにきは其がうれしかつたと見え、につこり笑つて、やがて私の顔を眺め乍らボロ/\と涙をこぼした。それぎりもう阿兄は口を利かなかつた。
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
森「己の所の旦那が阿兄あにきのことをア云う気性だから大丈夫だと安心していたがねえ、まア出牢で目出度めでてえや」
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
『どうしても阿兄あにきの子だ、面相おもざしのよく似ているばかりか、今の声は阿兄あにきにそっくりだ』となおも少年こどもの横顔を見ていたが、だ、まるで画であった! この二人ふたりのさまは。
河霧 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
私が阿兄あにきに、何か言つて置くことはねえか、と尋ねたら、苦しい中にも気象はしやんとしたもので
破戒 (新字旧仮名) / 島崎藤村(著)
といわれて治平は「はてな此の人は銀行に出ると云った阿兄あにきか」と思いましたが、の女に向い
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それがいやなら女郎に売るのと無理難題を申し、まだそれ計りではありません、阿兄あにきと云う者がございますが、私には義理ある兄でございまして、私のような者を捕えいやらしいことを云いかけますが
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)