関屋せきや)” の例文
松平蔵之丞様まつだいらくらのじょうさまのお屋敷と、須田村すだむらの間をぬけて、関屋せきやの里まで行き着いた主従四人は、綾瀬川あやせがわの橋のたもとにたちどまって
丹下左膳:02 こけ猿の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
清盛きよもりはいくら常磐ときわさがしてもつからないものですからこまって、常磐ときわのおかあさんの関屋せきやというおばあさんをつかまえて
牛若と弁慶 (新字新仮名) / 楠山正雄(著)
これやこの、知るも知らぬも逢坂の、行きかう人は近江路おうみじや、夜をうねの野に啼くたずも、子を思うかと哀なり。番場、醒が井、柏原、不破ふわ関屋せきやは荒れはてて、ただ漏るものは秋の月。
ドナウ源流行 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
ひとたびこのところ決潰けつかいせむか、じようはなの町は水底みなそこの都となるべしと、人々の恐れまどひて、おこたらず土をり石をせて堅き堤防を築きしが、あたかも今の関屋せきや少将の夫人姉上十七の時なれば
竜潭譚 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
辻斬り商売のお十夜孫兵衛じゅうやまごべえ、本名は関屋せきや孫兵衛である。もと阿波の国川島の原士はらし丹石流たんせきりゅう据物斬すえものぎりに非凡なわざをもち、風采もなかなか立派だが惜しむらく、女慾にょよくにかけても異常という性質がある。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)