鉤形かぎなり)” の例文
高木ぎんの地所はもとやや広い角地面であったのを、角だけ先ず売ったので、跡は崖に面した小家のある方から、団子坂上の街に面した方へ鉤形かぎなりに残っている。
細木香以 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
然し翁の医術はゴマカシではない。此を見てくれとさし出す翁の右手をよく見れば、第三指のさきが左の方に向って鉤形かぎなりに曲って居る。打診だしんに精神がこもる証拠だ。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
と小法師のもたげた顔の、鼻は鉤形かぎなりとがつて、色はとびひとしい。青黒あおぐろく、滑々ぬらぬらとした背膚せはだ濡色ぬれいろに、星の影のチラ/\とさまは、大鯰おおなまずの花を刺青ほりものしたやうである。
妖魔の辻占 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)