鈴生すずなり)” の例文
紫色に熟した桑の実が鈴生すずなりっていましたから、手を伸ばしてはそれを取って食べますと、ちょうど甘露のような味がします。
百合の花 (新字新仮名) / 小川未明(著)
トタンぶきの、あからさまな、みる影もないバラックになり果てゝは、つみ上げた番重ばんじゅうと、天井から下がった鈴生すずなり烏帽子籠えぼしかごとが、わずかにその風流みやびをみせているだけ
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
黒坊主黒坊主と言つて私を嘲弄てうろうしたことを、それから私が黒坊主と言ひそやされる反動で、奇妙な病気から鼻の両脇りやうわきに六つの小鼻が鈴生すずなりに累結してゐる子供を鼻六ツ々々々と言つて泣かせ
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
まざまざとして発見されたのであった、その他湖上の処々しょしょに、青い松の木が、ヌッと突出つきでていたり、真赤に熟した柿の実の鈴生すずなりになっておる柿の木が、とる人とてもなく淋しく立っているなど
雪の透く袖 (新字新仮名) / 鈴木鼓村(著)
黄金こがねなす鈴生すずなりをなつかしみ
白羊宮 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫薄田淳介(著)
二三町も行きますとやぶになっていて、土手の両方にはしきみの赤い実が鈴生すずなりになっている、かやの繁って、白い尾花のそよいでいるだらだら坂になりますが、そのだらだら坂を下りますと
嵐の夜 (新字新仮名) / 小川未明(著)