重吉じゅうきち)” の例文
ある日のこと、重吉じゅうきちはなにを思ったか、お父さんが大切にしまっていたものを、そっと取り出して、台所の片隅かたすみにかくしてしまいました。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
ものの懸念さに、母様おっかさんをはじめ、重吉じゅうきちも、嘉蔵かぞう呼立よびたてる声も揚げられず、呼吸いきさへ高くしてはならない気がした。
処方秘箋 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
とチョコ/\と来た者は妙な男で、もと東京の向両国むこうりょうごく軍雞屋しゃもや重吉じゅうきちと云う、体躯なりの小さい人でございます。
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さいがちょうどいいついでだから、帰りに重吉じゅうきちさんのところへ寄っていらっしゃい、そうして重吉さんに会って、あのことをもっとはっきりきめていらっしゃい。
手紙 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
いよいよ絶体絶命ぜったいぜつめいです。これももとはといえば重吉じゅうきちのいたずらから出たことです。思えば重吉がうらめしくなりました。で、とうとう六兵衛はおろおろ声で
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)
昔、ある村に重吉じゅうきち六兵衛ろくべえという二人の少年が住んでいました。二人は子供こどもの時分から大のなかよしで、今まで一度だって喧嘩けんかをしたこともなく口論こうろんしたことさえありませんでした。
とんまの六兵衛 (新字新仮名) / 下村千秋(著)