酒瓶ちろり)” の例文
しかし、同じ酒瓶ちろりの酒を酌みわけて、同じように飲んでいながら、金吾の舌には毒のようにほろ苦く、お粂の舌には蜜のように甘いようです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芸妓おんなたちは寒々と唇の紅を黒くして、船の中の小火鉢こひばちにかたまりながら、酒瓶ちろりの酒をかんしていた。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
すず酒瓶ちろりを机にのせて、寝酒をめていた会所守かいしょもり久六きゅうろくは、入ってきたのをジロリと眺めて
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と風呂をすすめ、その間に、下男女中をとくして、鮮魚、若鶏わかどりの物などの手早い料理、さて杯やら銀の酒瓶ちろりやら、盆果ぼんか点心てんしん(菓子)なども取揃えて、席も卓の上席にあがめ。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上をならう下で、われもわれもと、ほかの武士どもがまたこれを真似、またたくうちに、河内和泉の古寺の塔は、塔の簪花さんかたる飾りを失い、宝鈴ほうれいはみんな武士の酒瓶ちろりに化けてしまったという。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
横には、又八がいた、酒のつぼを棚から取って、自分の家の物のように勝手に酒瓶ちろりへうつしているのだ、今夜はお別れだから大いに飲もうというのである、後家の白粉おしろいは、いつもより念入りだった。
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところが、さいごの酒瓶ちろりにはしびれ薬がいつかぜてあったのである。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兵部は、つぶやいて、酒瓶ちろりのくびをつまんだ。一角へ、杯を与えて
無宿人国記 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
船宿の女将おかみが、料理の重箱や、酒瓶ちろりを運び入れている。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
酒瓶ちろりげてどこ行くの」
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
郡右衛門は、酒瓶ちろりを上げて
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)