酒問屋さかどんや)” の例文
時々酒問屋さかどんやの前などを御通りになると、目暗縞めくらじまの着物で唐桟とうざん前垂まえだれを三角に、小倉こくらの帯へはさんだ番頭さんが、菰被こもかぶりの飲口のみぐちをゆるめて、たるの中からわずかばかりの酒を
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
種彦は丁度豊後節ぶんごぶし全盛の昔に流行した文金風ぶんきんふう遊冶郎ゆうやろうを見るように両手を懐中ふところに肩を落し何処どこを風がという見得みえで、いつのほどにか名高い隅田川すみだがわという酒問屋さかどんやの前あたりまで来たが、すると
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
さて、師匠の所有の四体の観音は、その後どうなったかというに、一つは浅草の伊勢屋四郎左衛門の家(今の青地氏、昔の札差ふださしのあと)、一体はその頃有名だった酒問屋さかどんやで、新川の池喜いけよしへ行きました。
「ああそうだよ、酒問屋さかどんやの」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)