遭逢そうほう)” の例文
これ吾人が今日より断言するところにして吾人はただかの二国の皇帝宰相らがこの危険に遭逢そうほうするの準備を今日においてなさんことを祈るなり。
将来の日本:04 将来の日本 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
この不思議な遭逢そうほうの二人の男女は、どちらが頼り、どちらが頼られるとも知らずに、その場をおちのびました。
大菩薩峠:19 小名路の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
これの文、けだし少時のつくる所なり。嗚呼、運命遭逢そうほう、又何ぞ奇なるや。二十余年の後にして、筆紙前に在り。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
次の文政九年は抽斎が種々の事に遭逢そうほうした年である。先ず六月二十八日に姉須磨すまが二十五歳で亡くなった。それから八月十四日に、師市野迷庵が六十二歳で歿した。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
戦国乱世の習わしで、浮沈定めがたき運命に遭逢そうほうした徳川一家は四分五裂の窮境にち、やっと十歳になったばかりの広忠は、時の東条城主吉良持広をたよって落ちのびてきた。
本所松坂町 (新字新仮名) / 尾崎士郎(著)
ほのかにうけたまわれば世間には猫の恋とか称する俳諧はいかい趣味の現象があって、春さきは町内の同族共の夢安からぬまで浮かれるく夜もあるとか云うが、吾輩はまだかかる心的変化に遭逢そうほうした事はない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
恋する者の忘れられない初めての遭逢そうほうであった。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
如何なる場合に遭逢そうほうするも、決して禍を彼らに嫁し、藩政府に波及せしむるが如き事なきを告げ、かつ謂いて曰く
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
かくの如きの論を為せるの後二十余年にして、一朝簒奪さんだつの君に面し、其の天下にぐるのみことのりを草せんことをせまらる。嗚呼ああ、運命遭逢そうほうまた奇なりというべし。孝孺又かつて筆の銘をつくる。曰く
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)