逃亡とうぼう)” の例文
マチアはボブに二十七フランを、わたしたちの逃亡とうぼうのためにほねってくれた礼にやりたいと思ったが、かれは一スーの金も受け取らなかった。
あの者は、源氏閣げんじかくの上より逃亡とうぼうして、そのゆくえ知れずになっていた咲耶子さくやこという不敵ふてきな女、ことに、浜松城はままつじょうし立てることになっている罪人ざいにんじゃ。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
逃亡とうぼうした猿田飛行士の代りにミドリの兄の天津飛行士を加えただけで、あとはそのままの顔ぶれでもって、いよいよ地球へ向け帰還きかんにつくことになった。
月世界探険記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
すると、早百合姫に附添つきそっていた家来の男女は、薄情はくじょうなもので、両人しめし合せ、館も人手に売渡うりわたし、金目のものは残らずさらってどこかへ逃亡とうぼうしてしまいました。
鯉魚 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「いや、逃亡とうぼうをこころみて、悪漢どもの毒手にたおれたのかもしれんよ」
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
身をひるがえして自分の室に帰ると、大急ぎで電話機をとりあげると、研究事務室を呼び出した。あの室では言えないからミチ子をこっちへ呼びよせ、逃亡とうぼうをすすめる心算つもりだった。
階段 (新字新仮名) / 海野十三(著)