追儺ついな)” の例文
先ず『追儺ついな』である。羅馬ローマの古俗がどうのこうのといってあるが、実は文界の魔障を追い払う意味を裏面に含めたものである。
『日本百科辞典』巻七、追儺ついなの条にも明示された通り、当夜方相は戈で盾をたたき隅々すみずみより疫鬼を駈り出し、さて十二獣を従えて鬼輩を逐い出すのだ。
追儺ついなの豆に追われる弱い奴はこの終りの奴で、大江山の鬼などはなかなか豆位で、追っぱらわれそうもない。
ばけものばなし (新字新仮名) / 岸田劉生(著)
慶雲二年天下疫癘さかんにして、百姓多くうせたりしかば、土牛を造り追儺ついなといふ事始りき。異国の書には、農事のために時を示さんとて、土牛を立つる由見えたり。
その夜の追儺ついなに、太宰府天満宮の神事を移して、亀戸天神に催さるる赤鬼青鬼退治の古式、江戸ッ児にはそんな七面倒臭い所作なぞ、見るもじれったくて辛抱出来まいと思の外
残されたる江戸 (新字新仮名) / 柴田流星(著)
ちょうにおわせば、大晦日おおつごもりには追儺ついなの式、元日には清涼東階せいりょうとうかいの四方拝のおん儀、節会せちえ大饗たいきょうなど、さまざまな行事やら百官のとなえる万歳にことほがれ給う大君であり、あなた方であるものを
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)