)” の例文
先にはこの男を、半端な悪玉と冷笑ひやかした伊兵衛も、冷静な思慮になると、やはり幾つでも年の上な馬春堂に、一ちゅうさないわけにまいりますまい。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奇抜という点からいえば、一茶に一籌いっちゅうせねばならぬけれども、食われ残りの鴨よりは、食い残されて春に逢う菜の花の方に真のあわれはあるのである。
古句を観る (新字新仮名) / 柴田宵曲(著)
しかし身のたけ六尺五寸、体重三十七貫と言うのですから、太刀山たちやまにも負けない大男だったのです。いや、恐らくは太刀山も一籌いっちゅうするくらいだったのでしょう。
温泉だより (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
しかし、演奏はやはりギーゼキングに一歩をするだろう(コロムビアJ五六三九)。この曲の描いた降りそそぐ雨と、その晴れ行く庭の風情は言語に絶する美しさだ。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
今更手をいて一ちゃくする事は、文三には死しても出来ぬ。
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
わたしも亦あらゆる芸術家のようにむしろ譃には巧みだった。が、いつも彼女には一籌いっちゅうする外はなかった。彼女は実に去年の譃をも五分前の譃のように覚えていた。
侏儒の言葉 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
きけ、いかに曹操たりとも、わが水軍に対しては、一ちゅうするものがあろう
三国志:07 赤壁の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この点ではフィルハーモニーといえども一籌いっちゅうするかも知れない。
フロオベエル以前の唯一のラルテイストだつたメリメエさへスタンダアルに一籌いつちうしたのはこの問題に尽きてゐるであらう。僕が谷崎潤一郎氏に望みたいものは畢竟ひつきやう唯この問題だけである。