軽蔑さげす)” の例文
旧字:輕蔑
何が出来るものかと軽蔑さげすむ事もある。露骨でいやになる事もある。しかし今更のように考えて見ると、あの態度は自分にはとうてい出来ない態度である。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
なかにも婦人客は、神様が接吻キツスと嘘とのために特別きやしやに拵へたらしい唇を、邪慳にげて、軽蔑さげすみきつた眼つきをして、この黄いろい肌の日本人を見た。
その素振りがなんだか自分たちを軽蔑さげすんでいるらしくも見えたので、お絹はまず勃然むっとした。
両国の秋 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
うなると彼は、今日自分の遣つた事は、あらかじめ企んで遣つたので、それが巧く思ふ壺にはまつて智恵子に自白さしたかの様に考へる。我と我を軽蔑さげすまうとする心を、強ひて其麽そんな風に考へて抑へて見た。
鳥影 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
白痴ばかじゃ狂人きちがいじゃと仲間の者からは軽蔑さげすまれてはおりますが私の眼から見ますと、決して白痴でも狂人でもなく、一風変わった不思議な男で、それになかなか金山については豊富ゆたかな知識を持っておる。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
が、こっちからもう一遍会見の都合を問い合せたりなどして、常識のない馬鹿だと軽蔑さげすまれてもつまらない。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
しょうが合わぬ人を、合わねばそれまでと澄していた事もある。気の毒だと考えた事もある。なさけないと軽蔑さげすんだ事もある。しかし今日ほどうらやましく感じた事はない。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お延は軽蔑さげすんだ笑いをかすかにらした。しかし自分の批評は加えなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
お延は笑いながら、軽蔑さげすむような口調で津田の問を打ち消した。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)