身性みじょう)” の例文
餓鬼の時分から身性みじょうが悪くって随分お役に立つものだと云って手紙をおめえさんが書いてくれゝばい、その手紙を書いてお呉んなせえ
「お手間は取らせませんが、そこでひとつ、お聞き申したいんですが、あんた様ぁ、あの者の身性みじょうをよく御存じなんですか」
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
いわば野暮な盗人ぬすっとだが、知らねえ先あともかくも、こういう身性みじょうと聞いたらば、おぬしゃあいやになりやしねえか。
湯島詣 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
四人の身性みじょうについて、引ッ手繰たぐられるお手数だけでも省けるようにと思いまして、さいわい、四人のことなら、たいがいわれわれ二人が一伍一什いちぶしじゅう存じておりますから
身性みじょうが悪うございまして、私が十六の時家来の宇田金五郎うだきんごろうという者と若気の至りで私通いたずらをし、金五郎に連れられて実家を逃出し江戸へ参り
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
さりとて、これから突留めなければならぬのは、机竜之助の身柄よりも、むしろ問題の女賊そのものの身性みじょうである。これは物が物だけに、存外早く手がかりがつくだろう。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と海禪は硯箱をとって半治の身性みじょうを書いて、これ/\と紹介状ひきつけじょうしたゝめ、表書うわがきをいたしまして
「時に、市場でも難儀が降って湧いてのう、あのあま、まだ身性みじょうがわからんかいのう」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「これこれ、まだ貴様の身性みじょうを調べたわけではないのだ——連れはあるのか、ないのか」
大菩薩峠:36 新月の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
通り掛った尼は身性みじょうも善いという処から、これを堂守に頼んで置きました。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
そっちの方からお前の身性みじょうがわかってみると、お前のした仕事も身の慾得じゃねえ、立派な書き物を、見たがっている人に見せてやりてえという親切気から出たことであってみると
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
第一、自分の名を七兵衛と呼びかけて、あらかじめ身性みじょうを心得て来ている上に、駒井能登守様の名前までが引合いに出されてみると、兵助の言い分にうらはらがありとは思われない。
大菩薩峠:38 農奴の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
当人の身性みじょうに不明なところがあって、果して犯罪人かどうかはなはだ不明であるものを、そのまま処刑をするということは、小の虫を殺して大の虫を抑える、時にとっての策略でありとはいえ
大菩薩峠:40 山科の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)