かがと)” の例文
黒く磨かれた、かがとの高い靴で、彼女はきりっと、ブン廻しのように一とまわりして、丘の方へ行きかけた。
渦巻ける烏の群 (新字新仮名) / 黒島伝治(著)
「それ、それ——」と使丁はがなりつける。「まだかがとにいっぺえくっついてるじゃねえか——何だ、手前の脚は? 月に一ぺんぐらいはお湯にへえってんのか?」
白い壁 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
(あれ、気味きみわるいよ。)といふと婦人をんな背後うしろ高々たか/″\かがとげてむかふへんだ。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
やつした姿は商人風あきんどふう、縞の衣裳に半合羽、千草の股引き甲斐甲斐しく、両掛けかついで草鞋ばき、ひどく堅気に見せながらも、争われぬは歩きぶり、足の爪先踏みしめ踏みしめ、かがとこらえる武者運び
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
血に染みしかがとのあたり、蟋蟀きりぎりす啼きもすずろぐ。
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かがとにしめる紅色くれなゐ
泣菫詩抄 (旧字旧仮名) / 薄田泣菫(著)
入口の扉がいて、かがとの低い靴をはいた主婦が顔を出した。
(新字新仮名) / 黒島伝治(著)