足溜あしだまり)” の例文
今年中に、山野と桑田とは、文壇にともかくも、一個の足溜あしだまりを築くかも知れない。俺はもう決してじっとしておられないのだ。
無名作家の日記 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
前後左右から引きも切らずに来る雑多な車の刹那せつなの隙を狙つて全身の血を注意に緊張させ、悠揚いうやうとしたはや足になかばこえて中間にある電灯の立つた石畳を一先ひとま足溜あしだまりとしてほつと一息つき
巴里より (新字旧仮名) / 与謝野寛与謝野晶子(著)
「は、」と声かけて、するりと抜けた、土塀の上を足溜あしだまり。姿は黒き窓となンぬ。
わか紫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「やあ! 女だ。」とまた群衆はさけんだ。橋桁に、足溜あしだまりを得た人夫は、屍体を手際よく水上に持ち上げようとしているらしい。
死者を嗤う (新字新仮名) / 菊池寛(著)
ああ、あの荒物屋のばばっていうのが、それが、何よ、その清全寺で仏像の時の媼なんだから、おいらにゃあ自由が利くんだ。やしきからじゃあ面倒だからね、荒物屋を足溜あしだまりにしちゃあ働きに出るのよ。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)