赭土色あかつちいろ)” の例文
この刹那に、市郎の眼に映った敵の姿は、すこぶ異形いぎょうのものであった。勿論もちろん、顔は判らぬが、はだ赭土色あかつちいろで手足はやや長く、爪も長くとがっていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
皮膚の色さえ、小次郎には、故郷のにおいが感ぜられる赭土色あかつちいろの持主だった。眉は、粗で、眼はきれ長であり、面長なあぎとに近いあたりに、黒子ほくろがある。
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その下に体の大きい重吉がはげた赭土色あかつちいろの獄衣を着て、いがぐり頭で、終日そうやって縫っている。
風知草 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
川上はだいぶ降ったと見えて、放水路の川面かわも赭土色あかつちいろを増してふくれ上った。中川放水路の堤の塔門型の水門はきりっと閉った。水泳場のある材木堀も界隈の蘆洲の根方もたっぷりと水嵩みずかさを増した。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
脊丈せいず四尺ぐらいで、腰に兎の皮をまとっている他は、全身赤裸々あかはだかである。さめのように硬い皮膚の色は一体に赭土色あかつちいろで、薄い毛に覆われていた。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
又、彼等の皮膚が赭土色あかつちいろってしまったのは、生れてから死ぬまで岩石や赭土の中に棲んでいる為である。
飛騨の怪談 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)