赤鱏あかえい)” の例文
函館から札幌までは赤鱏あかえい尻尾しっぽの部分に過ぎないが、これだけ行ったので北海道の本当の大きさがいくらか正しく頭の中で現実化されたように思う。
札幌まで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
釣客はびつくりして島から舟へ飛び帰り、後を顧みるとそれは岩礁ではなくて大赤鱏あかえいであつたといふ話がある。
東京湾怪物譚 (新字旧仮名) / 佐藤垢石(著)
吾々は皆雑鬧ざっとうの中へと入った。どこの市でも魚を売る。鼻をくのはうれかかった赤鱏あかえいの猛臭である。つぼの中にはその切り身の塩漬けが唐辛とうがらしに色を染めて、人々を集めている。
全羅紀行 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
はげて、くすんだ、泥絵具で一刷毛ひとはけなすりつけた、波の線が太いから、海をかついだには違いない。……鮹かと思うと脚が見えぬ、かれい比目魚ひらめには、どんよりと色が赤い。赤鱏あかえいだ。
神鷺之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
と検事に、赤鱏あかえいのような形をしたドス黒いものを示した。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)