赤裸々せきらら)” の例文
人間が懺悔して赤裸々せきららとして立つ時、社会が旧習をかなぐり落して天地間に素裸すっぱだかで立つ時、その雄大光明ゆうだいこうみょうな心地は実に何ともいえぬのである。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
階級のいかんにかかわらず赤裸々せきららの人間を赤裸々に結びつけて、そうしてすべての他の墻壁しょうへきを打破する者でありますから
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
不義は御法度ごはっとだの、義理人情というニセの着物をぬぎさり、赤裸々せきららな心になろう、この赤裸々な姿を突きとめ見つめることが先ず人間の復活の第一条件だ。
堕落論〔続堕落論〕 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
彼らは我々の目の前に、一糸いっしまとわぬ、赤裸々せきららの姿を見せてはいますけれど、まだ羞恥しゅうちの着物までは、脱ぎすてていないのです。それは人目を意識した、不自然な姿に過ぎないのです。
湖畔亭事件 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
「エエイ黙れッ! このごろの貴様が赤裸々せきららの貴様なら、源十郎はおろか、だれとねんごろになろうとも栄三郎はすこしも驚かぬぞッ! ナ、なんたる……ウヌッ! なんたる淫婦いんぷ——!」
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
六々三十六りんを丁寧に描きたるりゅうの、滑稽こっけいに落つるが事実ならば、赤裸々せきららの肉を浄洒々じょうしゃしゃに眺めぬうちに神往の余韻よいんはある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
けだものの様な猫撫ねこなで声には、彼は人のいない襖の外で赤面した程、烈しい羞恥を感じたし、芙蓉の、昼間の彼女からはまるで想像も出来ない、乱暴な赤裸々せきららな言葉使いや、それでいて
(新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
そこで我々のような観察力の鈍いものは、なるべく修養の功を積んで、それから、大胆な勇猛心を起して、赤裸々せきららなところを恐れずに書く事をつとめる必要が出て参ります。
創作家の態度 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
彼の顔や姿や声音こわねなどが、どの様に源三郎に生写いきうつしであろうとも、それで以って、源三郎昵懇じっこんの人々をあざむきおおせようとも、舞台の衣裳を脱ぎ捨てて扮装を解いた閏房けいぼういて、赤裸々せきららの彼の姿を
パノラマ島綺譚 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)