赤蛙あかがえる)” の例文
もっとも昔はかえって今にない商売がありました。私の幼少の時は「柳の虫や赤蛙あかがえる」などと云って売りに来た。何にしたものか今はただ売声だけ覚えています。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
赤蛙あかがえるが化けたわ、化けたわと、親仁おやじ呵々からからと笑ったですが、もう耳も聞えず真暗三宝まっくらさんぼう。何か黒山くろやまのような物に打付ぶッつかって、斛斗もんどりを打って仰様のけざまに転ぶと、滝のような雨の中に、ひひんと馬のいななく声。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
孫太郎まごたろむしや、赤蛙あかがえる……
はてさて迷惑めいわくな、こりゃ目の前で黄色蛇あおだいしょう旨煮うまにか、腹籠はらごもりの猿の蒸焼むしやきか、災難が軽うても、赤蛙あかがえる干物ひものを大口にしゃぶるであろうと、そっと見ていると、片手にわんを持ちながら掴出つかみだしたのは老沢庵ひねたくあん
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)