賢所かしこどころ)” の例文
賢所かしこどころの神器を、玉体にお添えし、鳳輦みこしへと、おき立てはしたものの、それをかつぐ駕輿丁かよちょうの者はいず、ぜひなく、衛府の士が前後をにないまいらせる。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あかめがしわは上野公園入口の左側の土堤の前に列植してある。きささげは博物館の庭にあると。鴎外はこれに附記して、自分は賢所かしこどころ参集所の東南に一株あったと記憶するといっている。
すでに、賢所かしこどころ神鏡みかがみ(三種の神器の一つ)も、こうなるまえに、北山の西園寺公宗さいおんじきんむねの邸へひそかにうつしてあった。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だからおなじ蒙塵もうじん(天子の御避難)でも、今日の恐怖は、往時むかしの比ではない。——賢所かしこどころ渡御とぎょ(三種ノ神器の移動)を忘れなかったのがやっとであった。
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
賢所かしこどころの宝剣と御鏡とは、行宮を落ちて出るとき、とばりきれを裂いて、彼がきびしく背に守っていたのである。御諚にまかせ、それを兄藤房へわたすと、彼はどこかへ走って行った。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
せきとして、これをいぶかるような気配もない。そのまにミシリミシリ堂の廊を一巡してゆくと、神器のある賢所かしこどころでもあろうか、みを垂れた内陣の一隅に夜すがらともっている一すいの灯が見えた。
私本太平記:04 帝獄帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)