詫言わびこと)” の例文
壽阿彌は其年の冬のうちに弔書を寄すべきであるのに、翌文政十一年の春まで不音ぶいんに打ち過ぎた。その詫言わびことを言つたのである。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
茂「あい……誠にお父さんは面目ないから、お前からお母さんに詫言わびことを云ってくれ、お祖父じいさんは何うした」
霧陰伊香保湯煙 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
全躰なら『叔母さんの了簡にかなくッて、こう御免になってまことに面目が有りません』とか何とか詫言わびことの一言でも言う筈のとこだけれど、それも言わないでもよし聞たくもないが
浮雲 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
壽阿彌は怪我の話をして、其末には不沙汰ぶさた詫言わびことを繰り返してゐる。「怪我かた/″\」で疎遠に過したと云ふのである。此詫言に又今一つの詫言が重ねてある。
寿阿弥の手紙 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
弟子師匠の縁が切れてみりゃア詫言わびことをする訳もねえからね、人は老少不定ろうしょうふじょうで、年をとった親方いゝや、清兵衛さんよりわっちの方が先へくかも知れませんから、ひとあてにするのア無駄だ
名人長二 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
ホッと夢の覚めたようであゝ悪い事をしてさぞ新吉さんも困ったろう、いやだったろうと思って、それから伯父さんにね、打明けて話をして、私も今迄の心得違いは伯父さんに種々詫言わびことをしたが
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)