言辞ことば)” の例文
旧字:言辭
予のいわゆるける人間とは、死せる人間に対する言辞ことばにあらずして、死せる智識や活用されざる学問を有する者に対して言うのみ。
教育の最大目的 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
そして九節—十六節においては美しき言辞ことばを以て神の異能を描いている。天然と人事に対する神の支配は実にあざやかに書き記されている。
ヨブ記講演 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
口まで出かかった謝罪の言辞ことばを引っ込まして、伝二郎は本能的に懐中に紙入れを探った。なかった。たしかに入れておいたはずの古渡唐桟こわたりとうざんの財布が影も形もないのである。
また場末の寄席よせなどの下劣な芸人は白扇で額をたたいて卑狼ひわいな言葉を弄したりした。堕落した学生たちは「運転手になるのだっけ」というような言辞ことばをもてあそんで恥なかった。
芳川鎌子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
彼女が精神的にその感化を受けた点もお延にわかっていた。それでお延は順序としてまずこの叔父の人格やら生活やらについて、お秀の気に入りそうな言辞ことばろうさなければならなかった。
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ともかくもなだめすかして新井、葉石に面会せしむるにはかずとて、種々いろいろ言辞ことばを設け、ようよう魔室よりさそい出して腕車くるませ、共に葉石の寓居に向かいしに、途中にて同志の家をたず
妾の半生涯 (新字新仮名) / 福田英子(著)
神は其子を以て人類を審判さばき給う時に地を不信者の手より奪還とりかえして之を己を愛する者に与え給うとの事である、絶大の慰安を伝うる言辞ことばである。
言辞ことばは至て簡短である、然れども未来永劫を透視する全能者の言辞として無上に貴くある、故に単に垂訓として読むべき者ではない、予言として玩味すべき者である。
聖書は来世の希望と恐怖とを背景として読まなければ了解わからない、聖書を単に道徳の書と見て其言辞ことばは意味を為さない、聖書は旧約と新約とに分れて神の約束の書である