角髪みずら)” の例文
反絵の顔は勃然ぼつぜんとしてしゅを浮べると、彼のこぶしは反耶の角髪みずらを打って鳴っていた。反耶は頭をかかえて倒れながら宿禰を呼んだ。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
それは頭髪を角髪みずらにして左右の耳の上につかねた頭に、油をなみなみと入れた瓦盃かわらけを置いて、それに火をともすのでありました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
暫し想いを凝らせると、あの髪を角髪みずらに結んだ若い美しい婦人が裳裾を引きながら、目の前を通るように覚えるのでした。
「奈良」に遊びて (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
彼はいながら岩の上に降りて来ると、弓杖ゆんづえついてくずれた角髪みずらをかき上げながら、渦巻うずまつる刺青ほりものを描いた唇を泉につけた。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
「よし、我はなんじに勝とう。」と一人がいった。それは反絵に倒された兵士の真油まゆであった。彼は立ち上ると、血のついた角髪みずらで反絵の腹をめがけて突進した。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)