見脱みのが)” の例文
線路レールの枕木を切り出す山林やまを見に、栗山くりやまの方へ、仲間と一緒に出向いて行った。大分つかい込みの出来た叔父は一層もうけ口を見脱みのがすまいとしてあせっていた。
足迹 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
二人は家内かないの紳士をあつかふことのきはめて鄭重ていちようなるをいぶかりて、彼の行くより坐るまで一挙一動も見脱みのがさざりけり。
金色夜叉 (新字旧仮名) / 尾崎紅葉(著)
われわれの最大の美しい関心事は、人間活動の中の最も高い部分に位置する道徳と理智とを見脱みのがして、どこにも美しさを求めることが出来ぬ。「われら何をなすべきか」と能動主義者は云う。
純粋小説論 (新字新仮名) / 横光利一(著)
そしてそう思ってみると、ぴんと口髯くちひげの上へねたこのドクトルの、型で押し出したような顔のどこかに、梢家こずえけの血統らしい面影も見脱みのがせないのであった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)