覇権はけん)” の例文
やはり一方の座頭ざがしら株と認められていたのであるが、明治十年以後——いわゆる新富町しんとみちょうの全盛期になると、東京劇壇の覇権はけんはいつか団菊左の手に移って
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
それからいくばくもなく紅葉が多年の牙城たる『読売』をてて『二六にろく』に移った時は、一葉落ちて天下の秋を知るで、硯友社の覇権はけんがそろそろ徐々もろもろ傾き出した。
それひとつでも、武に誇って、ただ覇権はけんをふるうあなたでないことはよくわかります。けれどあなたは政治の裏にいて、表に立つのは、つねに左馬頭さまのかみ(直義)どのではございませぬか。
私本太平記:12 湊川帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
鄭芝竜ていしりょう(正保二年)は、我くにに向って、みんの援兵を請いつつあるに際し、英国においては鉄漢クロンウエル虎視竜蟠こしりょうばんし、大いに海軍を拡張し、海王の覇権はけんをば、和蘭オランダの手よりもどしてこれを奪い
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
予は信ず、本年の文壇に於て覇権はけんを握るものは此二氏に在ることを。
舞姫 (新字旧仮名) / 石橋忍月(著)
歌舞伎劇は影薄く、新派劇ひとりおごって、わが劇界の覇権はけんは前から後へ移り変わるかと見られた時に、あくる三十七年の二月には、かの日露戦争の幕が開かれた。その当時わたしは思った。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)