西丸にしのまる)” の例文
西丸にしのまる御召馬預おめしうまあずかり配下、馬乗役で、五十俵三人扶持。……渡辺利右衛門というやつがやったことだったんで……」
顎十郎捕物帳:03 都鳥 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
それは実に寛政かんせいの末つころ、ふとおのれがまだ西丸にしのまる御小姓おこしょうを勤めていた頃の若い美しい世界の思出されるまま、その華やかな記憶の夢を物語に作りなして以来このかた
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
彼は責任を知る晁錯ちょうそなり、無学なる(比較的に)王安石おうあんせきなり。彼は文化十二年寺社奉行となり、爾来じらい大坂城代じょうだいとなり、京都所司代しょしだいとなり、西丸にしのまる老中となり、遂に天保五年本丸ほんまる老中となる。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
維新前に、どこかの殿様が行列を正して西丸にしのまる近所を通って登城とじょうするさい、外国人が乗馬でその行列のはな乗切のっきった。殿様はもとよりその従者も一方ひとかたならず憤慨ふんがいし、殿とのはただちに通訳を
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
種彦は地にひざまずいて落ちたる二つの首級を交々かわるがわるに抱上げける人に物いう如くびていると、何時いつの間にやら、お園と思ったその首は幾年か昔おのれが西丸にしのまるのお小姓を勤めていた時
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)