褒状ほうじょう)” の例文
子孫の繁栄を祝するものけだしこれに優るものあるを知らずと。その為人ひととなりおほむねかくの如し。かつて上野なる日本美術協会の展覧会に出品して褒状ほうじょうを得たり。
礫川徜徉記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
その時為吉の父親は、二十七八の血気盛りの勇敢な漁夫りょうしで、ある漁船の船頭をしていたのでした。そして県庁から、人の生命を助けた効によって、褒状ほうじょうを貰いました。
少年と海 (新字新仮名) / 加能作次郎(著)
昔は共進会で、競馬うまとして褒状ほうじょうを貰ったこともある彼女も、今では時折りではあるが、荷馬車が必要になると、こうして駄馬として使用されることもあるのである。
南方郵信 (新字新仮名) / 中村地平(著)
郡の小学校が何十か集って、代表児童たちが得意の算盤そろばんとか、書き方とか、唱歌とか、お話とかをして、一番よく出来た学校へ郡視学というえらい役人から褒状ほうじょうが渡されるのだった。
こんにゃく売り (新字新仮名) / 徳永直(著)
またお差紙さしがみかと開いてみると、「お油御用あぶらごよう精励せいれいでお上も満足、今後とも充分気をつけて勤めますよう?——」言わば褒状ほうじょうである。大岡様からそっと出たものだ。一計といったのはこれである。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
つまり、わたくしのような謙遜けんそんな者に高慢ちきなあなたと折り合いがつくかどうかと思いましてな。ところが、あなたには褒状ほうじょうを差し上げてもよろしいよ——いっしょに暮らすことができますわい。
こうして人命を助けた場合には、一月ぐらい経って政府から褒状ほうじょうに添えて一円五十銭ぐらいの賞金が下った。老婆はこれを受け取ると、まず神棚に供えて手を二、三度たたいた後郵便局へ預けに行く。
身投げ救助業 (新字新仮名) / 菊池寛(著)