補布つぎ)” の例文
それは少々著古きふるされてはいたけれど、さっぱりと手入ていれがしてあって、肱などもきちんとしており、補布つぎなどはどこにもあたっていなかった。
埃と白墨チヨオクみた詰襟の洋服に着替へ、黒いボタンを懸けながら職員室に出て来ると、目賀田は、補布つぎだらけな莫大小メリヤスの股引の脛を火鉢にあぶりながら
(新字旧仮名) / 石川啄木(著)
樹脂タールで汚れて脂じんだ縞の寛袴シャロワールイを穿いた男が、もう一人の、ところどころに補布つぎの当つた青い長上衣スヰートカを著た、おでこに大きな瘤のある男に向つて言つた。
九歳こゝのつ。』と、その松三郎が自分で答へた。膝に補布つぎを當てた股引を穿いて、ボロ/\の布の無尻むじりを何枚も/\着膨れた、見るから腕白らしい兒であつた。
足跡 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
九歳ここのつ。』と、その松三郎が自分で答へた。膝に補布つぎを当てた股引を穿いて、ボロ/\の布の無尻むじりを何枚も/\着膨れた、見るから腕白らしい児であつた。
足跡 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
と、肘に補布つぎの当つた哥薩克風の長上衣を著た彼の従僕の少年が入つて来て、当惑さうな面持で、食卓の上へ包み物と木箱とを置くのにむかつて、柔和な声で言葉を掛けた。
補布つぎだらけな五六の蚊帳の隅つこに、脚を一本蚊帳の外に投出して、あふのけに臥てゐた。
赤痢 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
彼らはそれをまともに【外套】とは呼ばないで、【半纏はんてん】と呼んでいた。実際それは一種変てこなものであった。他の部分の補布つぎに使われるので襟は年ごとにだんだん小さくなっていった。
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
補布つぎだらけな五六の蚊帳かやすみつこに、脚を一本蚊帳の外に投出して、あふのけに臥てゐた。
赤痢 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「ずだずだになったらなったで、またすぐ補布つぎを当ててもらうさ。」
外套 (新字新仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)